河内啓二(東京大学先端科学技術研究センター)(第70回流体懇話会のご案内)


		      第70回流体懇話会のご案内

                                                  平成13年10月17日

  流体懇話会の講演会を下記のように開催いたします。どうぞご参加下さい。

講師:河内啓二(東京大学先端科学技術研究センター)

演題:生物の飛行メカニズム

内容:微小サイズの機械の設計は、人類にとって未知の分野である。物体の大き
さが変わると多くの物理量が変化する。人間の大きさはメートルサイズであるた
め、我々の感覚も思考方法も知らず知らずのうちにメートルサイズの「常識」に
立脚している。私達は自然界の微小生物の運動を観察することで、何がサイズに
より変わるべきで、何が変わらないべきかを考えている。生物のシステムは長い
自然淘汰の歴史を経て、その優越性・信頼性が確認されているところが魅力であ
る。我々が生物のシステムを調べてみると、生物が与えられた環境に見事に適応
しているのが普通であり、さらに環境の厳しい場合には最適に適応している例が
数多く見出されている。

  本講演では飛行や泳ぎ・推進などの流体中の運動メカニズムを、生物の大きさ
をパラメタとして説明する。我々の慣れ親しんでいるメートルサイズの世界では、
圧力が主体であるのに対し、物体が小さくなるにつれて粘性力が主体になり、さ
らにサイズが小さくなると、水の表面張力や、流体分子の運動量の不均一から生
ずるブラウン運動が無視できなくなる。まず、メートルサイズの世界で、運動器
官として広く使われている翼について説明し、航空機から鳥、あるいは魚の鰭ま
で広く使われていることを示す。続いてセンチメートルからミリメートルの大き
さに移り、この領域ではどんなに優秀な翼でも、粘性力が圧力に匹敵する大きさ
になり、昆虫の翼の形状や運動メカニズムが、メートルサイズの世界の常識から
大きく異なっていることを説明する。さらに物体が小さくなると、翼は粘性力の
ため運動器官としてもはや有効ではなくなり、生物は粘性力を利用してパラシュー
トのように抗力主体の運動器官を採用するようになる。また、ミズスマシやアメ
ンボのように、表面張力を利用した水上生活が可能になる。さらに、マイクロメー
タサイズ以下になると流体の分子の影響が出始め、ブラウン運動が顕著になる。
この大きさの生物は、環境を積極的に受け入れ、ブラウン運動に適応して生活し
ている。このように統一的に眺めてみると、人類の開発したメカニズムは、メー
トルの世界でのみ十分成熟し、ある目的では生物を追い越してもいるが、小さな
サイズの世界では、人工物は極めて未熟で、生物に学ぶことが極めて多い。

日時:11月9日(金) 16:30〜18:00

場所:電気通信大学 東4号館8階AV会議室(802号室)

                                                       流体懇話会事務局
                                                        (電気通信大学)
                                                     電話:0424-43-5394
                                                   FAX:0424-84-3327
                                   e-mail:nagare@maekawa.mce.uec.ac.jp

流体懇話会のお知らせ

連絡は懇話会事務局(naoya@miyazaki.mce.uec.ac.jp) まで

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