流体懇話会の講演会を下記のように開催いたします.どうぞご参加下さい。
川村 隆文 (東京大学 大学院工学系研究科 環境海洋工学専攻)
気泡吹き出しによる船体抵抗の低減 - 現象の実験と数値計算による解明
平成18年12月13日(水)16:30〜18時
ご注意ください:今回は水曜日です。
電気通信大学 東4号館 8階 AV会議室
マイクロバブルを乱流境界層中に注入することにより、壁面の摩擦抵抗を低減することが過去の多くの実験により証明されている。最大の低減幅は20%〜80%程度と実験により開きがあるが、何れの実験においても吹き出すマイクロバブルの量と抵抗低減量には、ほぼ比例関係が認められる。この現象は船舶の推進抵抗を低減する手段として有効であると期待されており、現在も実用化に向けた研究が行われている。
気泡による摩擦抵抗低減のメカニズムは未だ不明の点を多く含むものの、実験及び数値的な研究により一部解明されつつある。この講演では、特に最近行われた実験及び数値計算の結果を紹介し、気泡による摩擦抵抗低減メカニズムに関する仮説を示す。この仮説は、剪断流中の気泡は乱流を抑制する効果と促進する効果の2つを持ち、その2つの効果の相対的な関係は平均剪断率と乱流強度の関係によって決まるというものである。このモデルによると、気泡は平均剪断率が小さく、乱れが強いときに乱流エネルギーの生成を抑制する効果を持つ。また、このモデルは気泡径と抵抗低減率が無関係であるという実験的事実、及び低レイノルズ数で抵抗が逆に増加するという実験及びチャネル流のDNSの結果と整合性を持つ。今後、さらに検証を進める必要があるが、現状で得られているデータから想定できる範囲では気泡による抵抗低減メカニズムの合理的な説明であると考えている。